久々の今月のソロプレイは、「戊辰戦争」(同人GJ)です。まだ、ゲームジャーナルが同人誌の時代(平成10年)に発表された、会津・北陸戦争の戦略級アイテムになります。コンポーネントは、雑誌掲載の制限から、ハーフマップに、ユニット数180のミニゲーム風です。が、その中味は、デザイナー自ら「盛り込める物はどんどん盛り込むべし」と語っているとおり、新旧の幕末維新アイテムでも屈指のハードゲームになっています。

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1ターンは1ヶ月を表し、彰義隊討伐の起こった1868年5月からスタートし、最長は翌年2月までの10ターンです。勝利条件は、薩長軍は会津城を占領すれば勝利で、幕奥軍は江戸または京都を攻略すれば勝利です。ゲームの流れは、戦略級らしく、以下の通りです。

1.イベント(天命)
2.活動ポイント(資金)の生産
3.外交
4.再編成(再登場)
5.進軍(上旬・下旬)
6.会津城攻撃
7.人事・弾薬購入・艦船修理

このうち、移動-戦闘にあたる進軍は、上旬-下旬の2回が有り、行動が細分化されています。

①先攻・後攻の決定
②非正規隊の配置(新撰組別働隊・彰義隊・からす組・江戸ゲリラ)
③人材の前線配置
④江戸ゲリラの討伐または跋扈
⑤先攻側進軍(移動・戦闘)
⑥後攻側進軍(移動・戦闘)

⑤と⑥の進軍(移動・戦闘)は、さらに6つのセグメントからなります。

❶戦略移動・海軍移動
❷敵海軍の迎撃
❸自軍海軍の任務実行
❹戦闘移動
❺戦闘
❻戦後処理

この時点で、どれだけ複雑なシステムか、わかるでしょう。これに詳細極まる各種修整や特別ルールが加わるため、1ターンあたり、前半は1時間程度がかかります。かつ、まともにプレイできるようになるには、数回の演習(習熟)が必要です。慣れないうちは、新政府軍があっという間にサドンデス負けを喰らいます。ある意味、「ツクダ以上にツクダ」ゲームかも?!

ここまでだと、ただの面倒なアイテム(地雷アイテム)かと思われがちですが、このアイテムの凄いところは、きちんとゲームとして成り立っているところです。ゲーム開始前のキャラの生き残りチェックからはじまり、19種類に及ぶイベント、非正規隊や幕奥軍の藩ごとの特別ルール、戦術戦闘ルールなど、多数の要素を入れながら、習熟すれば、ほぼ史実で起こりえた会津決戦になりえます(!)。古い同人ゲームですが、デザイナーとテストプレイヤーが十分にテストした(遊び尽くした)様が、窺えます。

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特に、安政の大獄から禁門の変、薩長同盟の時局や鳥羽伏見戦争、関東への進軍などを「体験」できる(?)生き残りチェックは、幕末ファンには堪らないでしょう。西郷や小栗の戦略能力、竜馬や榎本の交渉力、大久保や勝の内政力、大村や土方の作戦能力、人斬り達の刀傷の戦術能力など、各キャラ立ちもGood!

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また、最も盛り上がる戦闘では、砲撃に始まり、射撃、白兵戦(切り込み)までの流れで、戦術的要素を十分に楽しむことができます。地形により参加できるユニット数を制限したり、マイナス修整を付けたりと、闇雲に攻めるだけでは作戦的な効果は上がらないようになっています。一方で夜襲や待ち伏せ、神風などの各種イベントの効果も大きく、適度なランダム性もあります。

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さらに、海軍ルール(輸送・迎撃・陸上砲撃)も手を抜かず(抜けず?)、詳細でして。強襲上陸や海上補給を使いこなすことが求められます。

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「よい子のみんなは真似しないでね~」という開き直りぶりに、かえって、爽快ささえ感じます(微笑み)。同テーマでは、究極のアイテムであり、まさに幕末維新ジャンルのラスボスと言えるでしょう。

ゲームの展開としては、以下のようになります。

<新政府軍の戦略>

新政府軍の勝利条件は、会津城の攻略です。よって、当然ながら、会津盆地への進入が必要になります。主力は史実通り、北関東と北越からの突入を狙います。

関東方面では、第1ターンは敵兵力も分散しているので、北関東の諸藩の動静によっては、思い切って宇都宮の攻略を視野に入れます。ただし、江戸を占領されるとサドンデス負けとなるので、江戸には十分な兵力を残す必要があります。その後は、京都からの増援を待って、史実通り、関東の佐幕藩を制圧してから、白河-会津突入を目指します。この時、彰義隊や新撰組別働隊の動きを牽制するため、一定の占領兵力をおく必要があります。

北陸方面では、幕奥軍の弾薬及び補給基地である新潟の攻略を行います。幕奥軍は長岡藩兵を使って新潟の奪還を狙うでしょうから、やはり史実通り、ここでの激戦となります。最終的に新潟と長岡を攻略できれば、西側からの会津盆地への進入を狙います。

会津盆地に進入できたら、続いて、会津城攻防戦になります。会津城は、それなりの部隊が籠もっていると、戦闘修整と相まって、まず、強襲では落ちません(薩長軍は白兵戦しかできず、かつ、幕奥軍は全て剣戦闘力+1)。よって、包囲による陥落を目指します。そのためには、薩長軍の砲兵を集める一方で、士気修正に影響する東北諸藩の攻略が必要になります。

東北諸藩は全域に広がっているため、効率よく攻略していくためには、海軍の輸送(あるいは強襲上陸)が欠かせません。大阪または江戸から海路を使って、一気にまとまった兵力を上陸させ、会津城包囲修整のある諸藩を狙います。当然、これを防ぐべく、幕奥軍海軍も出動するでしょうから、激しい海上戦闘が起こりえます。
 
以上をまとめると・・・
*主力は関東と北越に侵攻し、周囲の敵藩を攻略した後、あわよくば、会津盆地への早期突入を図る。
*会津城包囲を見越して、海路を使用した別働隊を東北諸藩に派遣し、随時、攻略をしていく。
*可能ならば、降雪前に、数を生かして会津盆地へ突入し、包囲態勢を作り上げる。

<幕奥軍の戦略>

幕奥軍は、この反対に会津盆地への進入をいかに遅らせられるか(あるいは、防げるか)にかかっています。11月以降は降雪の可能性があるので(全ての峠が薩長軍の補給線を遮断する)、遅滞戦術を駆使して、時間を稼ぐことが重要です。

そのため、北関東では宇都宮-白河が、北越では長岡が防御拠点(及び反撃の出撃拠点)になります。このゲームでは通常の攻撃では壊滅することはありませんが、退路がないと全滅するので、攻防ともに迂回と間接アプローチをうまく使うことが求められます。万一、防御拠点が落ちた場合は、会津を取り囲む峠での防御に切り替えます(おお、幻の関ヶ原の会津決戦か!)。

それでも、普通にプレイすれば、いずれは薩長軍に会津盆地に突入されます。が、ここで諦めるなかれ。周囲の部隊をかき集め、城の籠城部隊と共同すれば、薩長軍を叩き出すことも可能です。

一方でサドンデスを狙った突進により、江戸または京都を乾坤一擲で攻略する試みも有効です。失敗した場合、突入した部隊はほぼ壊滅しますが、時間稼ぎと以後の牽制になります。

この時、電撃侵攻の鍵になるのが、海軍です。3隻の艦船に兵員を乗せ、一気に江戸または京都近郊に迫れます。 特に江戸は幕奥軍の策源地(東北)に近く、陸上からの突進と連携すれば、攻略も夢ではありません(河越えから陸上部隊が、海からの上陸部隊が同時攻撃すると、地形修整はなし!)。
 
以上をまとめると・・・
*北関東と北越の防御拠点を中心に、迂回と間接アプローチで遅滞戦術を実施する。これが突破されたら、会津周辺防御に切り替える。
*チャンスがあれば、海軍と連動した京または江戸の攻略を仕掛ける。

長くなったので、リプレイは「その2」で・・・・。