この日、対戦予定があったのが、精密戦術級ナポレオニックの「Hougoumont」(CMJ)です。CMJ誌初の戦術級がこのアイテム(!)というのもチャレンジですが、基本システムは比較的に簡単で、プレイヤーはその名の通り、「戦術」に専念できるようになっています。
 
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シークエンスは、一方の移動・射撃と他方のリアクションから成り立っています。各ユニットは一律に16移動力を持ち、地形による消費移動力を消費しながら、前進します。ZOCはありませんが、敵味方を問わず、ユニットに隣接すると、+2追加移動力がつくので、けっこう渋滞になります。これを避けるには1ヘクス置きに散開して前進することで、映画のシーンのように全域に広がりながら前進するフランス軍が見られます。
 
射撃は行動の一部で、8移動力を消費して実施します。つまり、移動しなければ、1ターンに2回の射撃ができるというわけです。射撃判定は極めてシンプルで、射程距離やユニットの質による修整をして、1d6で敵のスタック値の合計以下ならば、1ステップロスとなります。ちなみに、フランス軍のスタック値は通常で4で、消耗状態で2。イギリス軍は、通常で2で、消耗すると1。つまり、同じ状態ならば、命中率比は連合軍が2倍となるわけです。
 
特徴的なのはリアクションで、8射程内で敵が行動をすると、非手番側がストップを宣言して、先にリアクション行動をします。このリアクションも、実は16移動力(!)と言うことで、敵が2回撃てば、リアクションでも2回撃てることになります。ただし、敵マップ端方向へのリアクション移動は禁止されています。
 
これを実際に当てはめると、どうなるかというと・・・薄く直線の戦列を引くイギリス軍に対して、フランス軍の前衛が前進。これに対し、イギリス軍が適当な距離に引きつけて発砲。その後、白兵戦をさけるために、8移動力で次のラインへ撤退。一角が後退すると、そこからフランス軍が流れ込んでくるので、回り込まれないうちに、近くの部隊が発砲・撤退をして、全ユニットが二次戦線に撤退します。
 
行動終了後に、フランス軍が敵に隣接できていると、白兵戦が行えるのですが、大抵は敵が大きな修整の付く生垣や外壁の後ろに撤収しているので、膠着か次ターンの攻撃に移ることになります。
 
そして、最後に、プロットしたイギリス軍の曲射砲が、フランス軍横隊に降り注ぎます。事前計画のため、目論見が外れることはありますが、2/3の確率で目標ヘクスの空中炸裂(効果7ヘクス!)となるので、うまく平地で敵を捕らえると、史実同様に恐るべき損害を与えることができます。
 
これで兵力が十分ならば、フランス軍に勝ち目はありませんが、イギリス軍の泣き所はなんといっても兵力数です。初期配置の本国軍はわずかに8ユニットで、同盟軍は12ユニットです。しかも、第8ターンまでに半数を(!)撤退させないと、-1VPとなります。損害や撤退したステップ数により増援も使用できますが、以後、8ユニットを投入するごとに-1VPが付くので、ギリギリの遣り繰りを余儀なくされます。
 
ちなみに、フランス軍は初期戦力だけで42ユニットがあり、増援で-1VPすることで、最大2個旅団(72ユニット!!)が投入可能です。完全に質対量の戦いです。
 
勝利条件は占領VPが多い方で、同数ならばイギリス軍の弾薬運搬道を遮断または維持している側が勝利します。Hougoumont邸宅が2VPで、庭園と果樹園が各1VPといえば、増援によるVP損失がいかに大きいか、実感できると思います。
 
今回は初対戦なので、簡単にルールを確認してからのプレイです。陣営は、kawaさんの希望でフランス軍を、抵抗するイギリス軍をmitsuが担当しました。
 
イギリス軍の基本方針はシンプルで、Hougoumontの邸宅の死守と果樹園か庭園の最終的な保持です。これがうまくいけば、3個増援グループを投入しても、フランス軍と同点になります(敵はほぼ、間違いなく増援を投入するため)。イギリス軍の弾薬運搬道は、こちらのマップ端に近く、後の手番ということでモラルの高いイギリス軍を白兵戦に集中できるので、維持または奪還は可能なはずです。
 
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この最終目標に向けて、できるだけ自軍の損害を減らし、敵に痛打を与えながら、前線から射撃/撤退を繰り返します。踏みとどまるとすれば、Hougoumont庭園の外壁ですが、いずれ、これも破られるので、邸宅を死守しつつ、増援を投入して、弾薬運搬道の保持に努めます。後は、曲射砲の「読み」次第かしら(笑い)。
 
第1ターン、ほぼ全域に横隊展開したフランス軍が、押っ取り刀で前進を開始します。まず、(イギリス軍から見て)右翼の果樹園を歩兵中隊が前進。これに対し、生垣越しに潜んでいたハノバー兵がリアクション射撃で1損害を与え、ウーグモンの戦いが切って落とされました。
 
果樹園と森に阻まれ、前進が遅れた中央部から右翼に対し、フランス軍は左翼の平地を疾走してきます。この横隊に対し、左翼の囲い地にいたナッソウ兵が次々に発砲をし、4損害を与えます。その後、全力で生垣の背後に滑り込み、次に防衛線を引きます。
 
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敵の攻勢軸がはっきりしたので、イギリス軍は、中央から右翼に近衛兵を送り込み、戦線を補強します。
 
第2ターン、左翼で損害を恐れずに生垣に接近するフランス軍に、再び、ナッソウ兵の一斉射撃が襲います。これにより、左翼のフランス軍は全てステップロスに陥りますが、猛烈な突進のおかげで、3ユニットが白兵戦を挑むことに成功します。条件は全くのイーブン、その結果は・・・1ユニットのナッソウ兵が潰走するものの、突撃で息の切れているフランス軍2ユニットも敗走し、イギリス軍の戦術的勝利となります。
 
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一方、厳しい地形を遮二無二、前進する中央から右翼には、イギリス軍の曲射砲がドンピシャで降り注ぎ、かなりの損害が出ます。2ターンの合計で、なんと32ステップロス!早くも増援の投入が決定します。
 
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これにより、左翼はウーグモン果樹園の戦いに突入し、中央はいまだ森の中で戦い続けます。
 
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第3ターン、あまりの損害に集中の危険を察知したフランス軍は、全面で散開を行い、慎重ににじり寄ります。これにより、損害は減ったものの、前進速度は鈍り、左翼の果樹園は膠着、中央から右翼は、イギリス軍は森の生垣の戦線を維持します。
 
第4ターン、恐る恐る近寄ってくるフランス軍に対し、イギリス軍は生垣に十分に引きつけて発砲し、庭園の外壁へと撤退します。森の地形効果と敵の消耗状態(目標サイズが小さくなっている)により、損害は抑えめです。が、森でもたついている間に、またもや曲射砲の洗礼を受け、合計損害は43ステップに達します。ちなみに、イギリス軍の損害は、わずかに1ステップです。
 
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第5ターン、すっかり消耗したフランス軍の前衛は、森の生垣ラインにへばりついたまま、庭園の外壁に陣取るイギリス軍に対峙します。再び、曲射砲が命中しますが、さすがに地形効果も高く、損害は軽微に終わります。
前線が膠着したと見たイギリス軍は、増援の条件を満たすべく、ナッソウ兵の一部を引き抜き、マップ端へ向かわせます。
 
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第6ターン、フランス軍に待望の増援が登場。左翼で2段の戦列を組むと(増援を2回に分けると)、駆け足で囲い地に突入してきます。
 
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が、これは完全に読まれていました。無防備な平地に位置する敵増援に対し、10発の曲射砲が炸裂し、一気に9ステップロス(!)を与え、第一陣を半壊させます。
 
フランス軍は、右翼の一部が突入の気配を見せるものの、戦力不足でいまだ庭園内には入れず。が、撤退期限の近づいたイギリス軍は、兵力の約半数を転出せざるを得ず、外壁の防衛線に穴が開きます。
 
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第7ターン、これまで耐えに耐えてきたフランス軍は、増援の到着とともに、一斉に前進を開始します。守備兵が置けなかった東側の外壁をフランス兵が次々と乗り越え、ついに庭園内に進入します。イギリス軍も必死に防御射撃を行いますが、所詮は多勢に無勢で対処しきれず。銃剣を輝かせて白兵戦を挑むフランス軍に圧倒され、庭園の北西の一角を占拠するに留まります。
 
勢いに載るフランス軍は、右翼を迂回させたスタックを持って、邸宅の北門を攻めます。ここに配置されていたのは、マクドネル指揮下の近衛兵1ユニット。わずかの差でしたが、量で優るフランス軍が近衛を圧倒し、ついに邸宅内への進入に成功します。
 
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一気に劣勢になったイギリス軍は、増援が来ることを信じ、兵力をかき集めて反撃に出ます。まず、射撃能力に優れるハノバー兵が、北門に陣取る敵スタックを縦射し、兵力を削ります。そこへ、邸宅内から駆けつけた近衛が白兵戦を敢行し、フランス軍から北門を取り返します。まさに、一進一退の攻防!
 
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第8ターン、今度は手薄になった西門に、フランス軍のハイスタックが押しかけます。その数、3ユニット相当!施錠直前で閉門していた西門を無理矢理にこじ開け、大量進入してきます。「Wellington's Victory」の箱絵のような激戦です。
 
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増援の到着でなんとか左翼の手配を終えたイギリス軍は、中央からも強引に兵力を引き抜くと、邸宅内の戦闘に投入します。まるで、百数十年後のスターリングラードか?!密集するフランス軍歩兵に対し、またもハノバー兵を含む、2ユニットの射撃で兵力を消耗させると、マクドネルが陣頭に立って、近衛兵による逆襲を敢行します。結果は・・・イギリス軍の勝利!再び、閉門に成功!
 
ここが、フランス軍の攻勢限界線でした。二度にわたる邸宅内の突入や命中率で優るイギリス軍との射撃戦で、またもや兵力を消耗。第2弾の増援(損害60ステップ以上)も活性化しましたが、中央から右翼を中心に投入したため、地形に阻まれ、時間が経過。その間に、イギリス軍の2個増援部隊が到着し、左翼の果樹園で逆襲に成功します。
 
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と、ここで、時間終了。久しぶりに一例会で1アイテムという、濃密な対戦でした。勝利条件的には、次ターンにイギリス軍の3個目の増援部隊が到着予定のため、庭園はともかく、フランス軍による果樹園の確保は、かなり困難。イギリス軍の優勢といったところでしょうか。
 
初対戦ということで、最後までは行きませんでしたが、こんなレアアイテムがプレイできて、幸せです。おつきあいいただいたkawaさん、どうもありがとうございました。いつか、決着を付けましょうね!