今月のソロプレイ第2弾は、欧州末期戦アイテムから「Seelow & Kustrin 1945」(SA)のシナリオ「ゼーロフ高地の強襲」です。文字通り、ヨーロッパの最終戦となったベルリン攻防戦の序章です。
 
ベルリンに向かう最短ルートである国道1号線を扼しているのが、要塞化されたゼーロフ高地であり、史実ではドイツ軍の巧みな防御戦術により、主力の突破が遅滞します。といっても、わずか一日程度の遅れでして・・・。すでに兵員数及び装甲兵力で約10倍、砲兵力に至っては50倍(!)の差があったわけで、いかなる戦術を持ってしても、突破を防ぐのは不可能でした。
 
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ゲームでも、これは「正確」に表現されています。非装甲ユニットに対しては破壊をまき散らす圧倒的な砲兵力、渋滞を引き起こしがらも無尽蔵に湧いてくる歩兵戦力、精神的にも物理的にもドイツ軍の支柱となる装甲兵力、などなど。シークエンスは(山﨑氏らしい)ちょっと凝ったもので、圧倒的な砲撃の後で、戦車戦力同士の戦車戦、そして通常の歩兵戦となります。ほぼセットアップは固定されていて、2日間の攻防で戦闘の制限のある黎明と薄暮、戦闘のできない夜間となっています。
 
第1ターン、ソ連軍の黎明の砲撃からゲームはスタートします。黎明時には視認が2ヘクスしかできないため、砲撃は4箇所に留まります。が、その分、高密度の砲撃が降り注ぎ、いずれの前線ユニットも損耗の上、敗退となります。
 
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そこに、歩兵戦力が殺到し正面攻撃をかけますが、黎明時の混乱(dr+2)により、北方の1箇所を除き、4箇所でソ連軍が一時後退となります。
 
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対するドイツ軍の砲撃も強力で、混乱した敵に対し総花的に砲撃を行い、3ユニットがステップロスします。
 
痛かったのは回復フェイズで、士気値で優るはずのドイツ軍が、悉く回復に失敗。次ターンの敵の猛攻が憂慮されます。
 
第2ターン、焦るソ連軍は、ジューコフの檄を受け、中央部に集中砲撃を行います。空いた大穴から駆けつけた戦車旅団が突入し、5ユニットが包囲殲滅されます。残りの部隊もハウプト運河に向けて、一斉に後退を行いますが、混乱状態(移動力1/2)が影響して、少なからずのユニットが平地に取り残される事態に。
 
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第3ターン、前線に駆けつけたドイツ装甲兵力とソ連軍の戦車戦力の間に激烈な戦車戦が起こります。ドイツ軍も必死の抵抗をしますが、1個中隊に対し複数の戦車旅団(!)を集中したソ連軍がまさり、1ステップの損害と引き替えに、ドイツ軍の3個中隊が昇天します。確かにStalinやT34/85の大群を相手に、突撃砲では分が悪いか・・・。
 
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余勢を駆って、通常攻撃で早くもハウプト運河越えが可能でしたが、後方にスタックしているSS装甲大隊を警戒し、Stalin重戦車はあえて戦闘後前進をせず。
 
ドイツ軍は、無尽蔵に思える敵歩兵に砲撃を行いながら、やむをえず、SS装甲大隊を分散し、擲弾兵とスタックして戦線を維持します。
 
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第4ターン、中央部が堅いと見たソ連軍は、南部と北部に戦車を迂回させ、突撃を命じます。擲弾兵も一体となって対戦車戦闘を行いましたが、結果はまたもドイツ軍の突撃砲2ユニットが壊滅します。
 
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この危機に、ドイツ軍は砲兵で前線の敵歩兵を敗走させると、自由を得た装甲兵力と増援を南北に投入します。さすがに集中した装甲部隊は強力で、敵の先鋒である戦車旅団(T34)に2ヒットの打撃を与え、戦線を沈静化します。
 
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第5ターンも同様に、局地的に優位に立った装甲兵力で、敵の主力である戦車旅団を狙いましたが・・・ああ、ここで誤算が。確率的には有利だったはずの戦車戦で、敵を敗走させるも、またも2ユニットが犠牲に。しかも1ユニットは、最南部の防衛の支柱であるSS装甲中隊(クーニッヒティーガー装備)!まずい、ドイツ軍装甲兵力の消耗が早すぎる!
 
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これに勇気を得たソ連軍は、視界が悪化するにも関わらず、薄暮ターンに北部で戦車戦を挑み、4号戦車中隊を撃破します。
 
と、ここで夜の帳が降り、戦闘は一時中断に。この時間に陣地転換の余裕を得たソ連軍砲兵が、ゼーロフ高地全体を収める位置まで前進してきます。
 
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明けて第8ターン、再び、暴力的なまでの砲撃がドイツ軍の非装甲ユニットを襲います。ユニット数が少ない戦線の南北を狙って、全て17火力を越える高火力砲撃!結果、4つの目標全てが潰走し、突破口が開きます。
 
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夜明け間近の薄明かりで移動に難を来しながらも(移動力1/2)、戦車兵力が敵の陣地に殺到し、守りにつくドイツ軍戦車と激烈な戦車戦に。ここでもソ連軍が数で圧倒し、またもや装甲兵力2ユニットがヴァルハラ行きになります。続く戦闘フェイズに、南北戦線の要となる村を奪取。
 
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砲兵による撤退掩護をうけて、かろうじて後退したドイツ軍に、第9ターン、ソ連軍の猛砲撃と戦車突進が繰り返され、砲兵陣地まで巻き込まれる事態に!
 
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この危機に、ドイツ軍の機動防御が芸術的な光を放ちます。周到に計算された撤退砲撃に紛れ、SS戦車と駆逐戦車の4個中隊が最前線のT34を襲撃!正確かつ猛烈な対戦車戦闘でわずか2時間で、敵の1個旅団をスクラップにしてしまいます。そのまま、敵が消えた戦場を支配し(戦闘後前進)、さらに1個旅団を包囲し、次ターンに壊滅させます。わずか1個中隊の損害と引き替えに、敵の2個旅団を殲滅!まさに、ドイツ装甲部隊の最後の輝きでしょう!
 
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が、この結果、ギリギリの戦力で支えていた北部で、破滅が訪れます。わずか2個中隊(!)にまで減少していた第20装甲擲弾兵及びミュンヘベルク師団の生き残りは、ゼーロフ郊外で絶望的な防衛戦を試みますが、JS3を中核とする6個旅団(!)に圧倒され、壊滅。擲弾兵による抵抗も空しく、第10ターンに、ついにゼーロフ市が陥落します。
 
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もはや、ゼーロフ奪還は不可能と判断したドイツ軍は、敵の決定的な突破(勝利条件)を防ぐため、ディーデルドルフ近郊に防衛線を張ります。
 
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圧倒的な戦力を持つソ連軍でしたが、最後まで義務を果たして前線の歩兵を砲撃し続けたドイツ軍砲兵と厚い装甲で戦車戦を耐え抜き、後退しながらも突破を許さなかったSS戦車中隊(わずか1ユニット!)により、要衝ディーデルドルフは陥落せず。両軍とも膨大な損害を出したゼーロフ高地の戦闘は、夜の帳とともに幕を下ろしました。 
 
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勝利判定では、
ゼーロフ市の全ヘクスの占領により、ソ連軍の作戦的勝利
となりました。
 
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イメージは、2日間の戦闘で壊滅したユニット。「生きて帰らず」
 
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ゲーム的な展開としては、序盤を除き、圧倒的な兵力を持つソ連軍がドイツ軍を平押しするもので、ヴァリエーションはほとんどありません。が、移動制限が厳しいため、ソ連軍は集中した戦車旅団の運用を、ドイツ軍は撤退砲撃と組み合わせた装甲兵力による反撃に知恵を絞ることになり、作戦戦術級の楽しさを味わえます。
 
ちゅっと癖のあるシステムなので、インストには向きませんが、総じて山﨑デザインらしい「正しい歴史展開」のアイテムです。ミニゲームの割りにはボリュームもあり、史実好きの方にはいいでしょうね~。