今月のソロプレイ第二弾は、バルジ熱冷めやらぬ西部戦線から「Aus dem Traum」(旧GJ)です。同人誌時代のGJで発表されたもので、イメージを見ていただければわかるように、実質B5のマップという、師団規模のミニゲーム扱いです。
 
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シークエンス自体は通常の移動-戦闘-予備移動ですが、オペレーションポイント(OP)という補給システムを有機的に組み込んでいます。通常の移動力は1ですが、1OPを消費すれば、そのスタック(通常は2個師団)は3移動力を得ます。敵に一切、隣接せずに道路上だけを移動するならば、これが6移動力に(!)。もっとも、これだけ狭いマップなので、ドイツ軍は滅多に使えませんが・・・(逆に、連合軍は使えないようにしないと、厳しくなります)。また、混乱状態になったユニットを回復する時にも、1OPを消費します。
 
このOPが潤沢にあればドイツ軍は無敵ですが、備蓄は15OPのみ。毎ターン、2OP強が補充されますが、10ターンを戦い抜くことを考えると、決して浪費できるものではありません。連合軍に至っては、初期の備蓄はわずかに2OP(!)なので、初めのうちは戦線維持のための移動さえ、ままならないことも・・・。
 
戦闘は、同一ヘクス内戦闘で、いずれかが全滅するか退却するまで続きます。通常は、進入した主攻部隊の戦力と支援部隊のサポート(+1または+2)で、戦力差のCRTを使用します。この時、1OPを消費すると、戦闘しない部隊がいる隣接ヘクス数の戦力修整が得られます(理論上は最大で+6)。CRTは基本は損耗型で、はじめの1損害は混乱状態となり、それ以上ならば継戦能力値まで1ヒットずつ、受けていきます。ちなみに師団規模だと継戦能力は3で、旅団は2、連隊は1となっています。
 
珍しいシステムなのではじめは勘所がつかめませんが、かなり理にかなった戦況になります。たとえば、第12SS装甲師団(支援力+2)に支援されたLAH装甲師団(戦闘力が最強の8)が、森林の町(ともに地形効果+1)に立て籠もる支援付きの歩兵師団(戦闘力4)を攻撃すると、戦力差+3となります。この時、隣接の2ヘクスに味方の歩兵がいて1OPを消費すると、共同攻撃で戦力差+5に。このコラムでの平均ヒット数は、攻撃側0.5:防御側2で、R(退却)の確率も1/3です。はじめの一撃(平均2ヒット)を耐えたとしても、第二ラウンドで壊滅する(3ヒット)確率が高くなります。そこで、防御側は、次のラウンドは。予備だった歩兵師団を前面に押し立てて、損害を受けた歩兵を支援に回します。このローテーションを使えば、最大で8ヒットまで耐えられることになります。攻撃側も同様で一定の損害を受けたら、予備の部隊と後退して、戦闘を継続することになります。
 
ユニット数が多いアイテムだと、詳細すぎてやってられませんが、戦闘が多くても5-6箇所程度という、この規模(師団相当)ならではシステムだと言えます。CRTもよく練り込まれていて、最大差+7で攻撃しても、1/6の確率で損害が出るようになっていて、ほどよい流動性を生み出しています。
 
勝利条件は、3つの重要都市を落として、ミューズ河を補給状態で越えれば、ドイツ軍のサドンデス勝利。それ以外は、最終ターンの確保している都市の種類と数で決まります。基本的にドイツ軍はサドンデス勝利を、連合軍はその阻止を狙いますでは、ソロ演習のAARを。
 
第1ターン、ドイツ軍は敵のユニットを減らすべく、総花的に比率の高い消耗戦を仕掛けます。第6SS装甲軍で+7攻撃を2箇所、第5装甲軍で+4から+6攻撃を3箇所、第7軍で+2攻撃を1箇所です。ドイツ軍もやや多い損害(3ヒット)を出しながらも、5ユニットの除去に成功します。
 
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OP寡少によりまともな機動もままならない連合軍は、要衝のサンビットとマルメディにスタックを作り、最低限の道路封鎖をします。
                              
第2ターン、ドイツ軍は中央部のサンビットとクレルヴォ近郊では、力押しを実施します。地形効果により、戦闘比は高くありませんでしたが(+2と+4)、drがよく敵にダメージを与え、退却を余儀なくします。また、北部と南部で増援の装甲部隊を注ぎ込んで、高戦力の強襲を行い、同様に打撃を与えます。
 
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連合軍は、サンビットを叩き出された2個連隊で足止めをしながら、増援を投入して北部の守りを固めるます。中央部と南部では空挺師団と機甲師団を要所に配置し、敵の進撃を待ちます。
 
第3ターン、ドイツ軍は、中央の敵を蹂躙しながら前進。守りの堅い北部ではガチンコ勝負上等で装甲師団を集中して、マルメディ周辺に圧力をかけます。ともに0/1となり、連合軍は戦線を維持しながら、退却。一方、南部では、バストーニュ近郊で攻略準備を仕掛けるとともに、南部の補給地点エテルナッハを強襲し、敵を退却させます。
 
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連合軍は、オイペン-スパ間を歩兵師団で埋めるとともに、バストーニュに籠城して、敵の動きを待ちます。
 
第4ターン、中央部は燃料節約のため、通常移動をしつつ、北部と南部で攻勢に出ます。北部では陣地に籠もる歩兵師団に対し、SS装甲師団をスタックさせ、歩兵との共同攻撃を実施。確実な戦力集中が効いて、損害なく3ダメージを与え、さらに敵を退却させます。南部では、南端の機甲連隊を同じく平押しで西側に押し込みます。
増援のない連合軍は、北部では最低限の混乱部隊をOPで回復させ、要衝ヴェルヴィエとオイペンをスタック防御をします。
 
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第5ターン、ドイツ軍は総力を結集して、ヴェルヴィエの攻略に出ます。SS装甲師団を集中投入して、森林河川の主要都市に立て籠もる精兵歩兵師団を攻撃しましたが・・・結果はR1/1Rで敵も退却させるも、自軍も敗退。
一方、中央部では、ミューズ河への突進に向けて、第2装甲師団スタックで、ラ・ロッシュの第82空挺師団を攻撃し、これを撃退します。
 
南端では、補給源を狙って攻勢を継続し、ついに2箇所の補給道路を確保します。次ターンにかけて、ここから2個師団が突破し、連合軍の南部の増援を引きつけます。
 
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連合軍は、到着したイギリス軍を、ミューズ河越しに配備するので手一杯で、消耗する前線の補給はできません。
 
第6ターン、この最も敵が薄くなった瞬間を狙って、ドイツ軍がピンポイントで強襲をかけます。先に戦闘で消耗したLAH装甲師団に代わり、DR装甲師団を先頭に、再び、ヴェルヴィエを強襲!戦力差+2は同じでしたが、退却と消耗で薄くなった防衛線を突破し、ついにここを攻略します。
 
中央部と南部では、逃げる敵を捕捉し、再び、痛打を与えて敗走させます。これにより、中央突破と3主要都市の占領が現実的になったドイツ軍は、予備の部隊や増援を中央に集め、突破を図ります。
 
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増援を得た連合軍が選んだのは、北部での逆襲でした。最精鋭の第3機甲師団をオイペンから突出させ、ヴェルヴィエの側面を守る擲弾兵師団を撃破。さらに、次ターンの補給切れ上等でもう片方の側面を、2個歩兵師団が強襲し、ここでも擲弾兵師団を撃破します。その結果、ヴェルヴィエに進行した3個SS装甲師団を含む、4個師団が補給切れに追い込まれます!
 
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第7ターン、北部の危機にドイツ軍は増援を持って足止めをするともに、ヴェルヴィエ救出部隊の集結を急ぎます。一方、中央部では、5個機械化師団を含む6個師団を集中投入し、損耗していた敵を共同攻撃します。これが見事に決まり、中央部で苦しい後退戦を行ってきた第82空挺師団が壊滅します。ついに、ミューズ河への道開く!
 
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連合軍は、ヴェルヴィエでポケットを作ったまではいいものの、主力が損耗していたため、回復を優先し、掃討は次ターンに。一方、危機的状況の中央部には、1個機甲師団を派遣するともに、増援の機甲師団を予備にして、敵の侵攻に対応させるようにします。
 
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第8ターン、ドイツ軍は次ターンのミューズ河渡河に備え、主力の第12SS装甲師団と第150装甲旅団部隊を、慎重に距離を図って前進させます。一方、北部では、駆けつけた装甲師団が救出作戦に備えます。
連合軍は、ミューズ河渡河阻止に向けて、慎重に部隊移動を行い、全てのポイントで8戦力以上をスタックさせます。
 
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第9ターン、北部では包囲下のヴェルヴィエに向けて、救出部隊が出撃。地形効果は高いものの自身も補給切れのスパを狙い、猛攻を加え、補給路を開設に成功します。
 
そして、今や、主攻となった中央部では、燃料を惜しげもなく注ぎ込んで、ディナンを占領。ここからの渡河攻撃を実施します。これが決めればサドンデスという展開に、連合軍は空軍の投入を決定。第12SS装甲師団・第150装甲旅団部隊とイギリス軍近衛機甲師団と第51歩兵師団のガチンコ勝負に。戦力差はわずかに+1!4ラウンドに及ぶ激戦の末、連合軍が4ダメージを受けながらも、敵のR1でギリギリで踏みとどまることに成功します。
 
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後がない連合軍は、補給で必死に両部隊を回復させ、最終ターンの攻防を待ちます。また、北部では連絡路は開通したものの、未だ補給が届かないヴェルヴィエに対し、機甲師団を先頭に奪回戦を挑みます。共同攻撃により戦力差+5になりながも精鋭SS装甲師団が粘りましたが、第4ラウンドの連続攻撃により8ヒットを受けて、LAHと第9SS装甲師団が壊滅!これで、ドイツ軍の占領都市は2個に減り、サドンデス条件を満たせないことに。
 
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第10ターン、ドイツ軍は最後の希望をかけ、まず、バストーニュを攻撃します。敵の機甲師団がサンビット奪還へ出撃したため、残りは第101空挺師団のみでしたが、堅い防御効果もあり、戦力差は±0。1/6の確率で攻撃失敗でしたが・・・第4ラウンドの猛攻の末、1個装甲擲弾兵師団の壊滅と引き替えに、空挺師団を全滅させます。これで、再び、サドンデス条件の3都市占領を満たします。
 
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そして、最後の気力を振り絞って、二度目となるディナン渡河作戦へ。先陣を切るのは、史実通りの第2装甲師団。退却ならばスタックオーバーで全滅という背水の陣を持って、消耗しきったイギリス軍を強襲します。結果は・・・第一撃で敵に痛打を与えたことで、戦闘差が拡大し、連合軍の勝機がなくなり、ジ・エンド。ドイツ軍、ついにミューズ河を越える!この瞬間、サドンデス勝利が確定しました。
 
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いやー、面白かった!最終ターンまでもつれ込む希に見る死闘で、ドイツ軍にとってはまさに薄氷の勝利でした。連合軍は北部での反攻が決まり、一旦は敵の勝利を押しとどめたのですが、まさかのバストーニュ陥落が響きました。もっとも、北部反攻をしなければ、ミューズ河は守り切れたかもしれませんが、勝ちに行くなら、この展開でしょう。
 
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形は小さいけど、システム的にもバランス的にもよく練られた秀作です。今なら、WGHBとか第二付録あたりで、再版してもいいかも(ただし、中級向けで)。希望の方がいれば、ぜひ、対戦したいものです。濃密な2時間バルジを楽しめると思いますよ~。