今月のソロプレイ第二弾は、続いて第一次世界大戦ジャンルから「モンスの戦い」(CMJ)です。開戦直後の西部戦線で、シュリーフェン計画に従ってベルギーを西進するドイツ軍と、フランス軍と共同すべくモンス周辺に陣取ったイギリス軍との遭遇戦です。2日間の局地戦を描いたもので、このジャンルでは珍しい作戦戦術級です。

といっても、機械化部隊や戦術空軍などはないため、ルールは至って簡単。ドイツ軍は、移動-戦闘を繰り返し、戦闘では砲撃戦と白兵戦があるくらい。イギリス軍は、そのエリート性を表現するため、任意で2行動(移動または戦闘)を選ぶことができます。よって、展開としては、正攻法でにじり寄り、砲撃戦の結果を見て、白兵戦を仕掛けるドイツ軍と、先に戦闘を選んで砲撃で痛打を与えた後、戦線の補強なり、撤退行動をとるイギリス軍と、両軍の違いが、実にスマートに表現されています。
勝利条件も絶妙で、一日目はドイツ軍が北部にある運河の全ての橋を確保すれば、勝利。二日目は、イギリス軍の損耗か、バヴェの確保、あるいは撤退の阻止により、2VPを獲得すれば、ドイツ軍が勝利します。初日の橋の確保自体はかなり困難ですが、いくぞと見せかけて、牽制をすることで、イギリス軍に消耗戦を仕掛け、かつ、北に誘引することで、二日目の撤退に圧力をかけます。ただ、イギリス軍には運河という地形効果があり、大量の砲兵がいるために、むやみに攻撃をし続けると、ドイツ軍が大量出血で攻勢を維持できなくなります。
事前のお試しプレイでは、緒戦は、ドイツ軍が出血多量で夜を待たずに投了。2回目は、効率的なドイツ軍の攻撃に消耗戦に巻き込まれ、イギリス軍が崩壊して投了。砲撃を待つべきか、それとも、突撃すべきか?粘るべきか、あるいは、撤退すべきか?両軍とも、的確な状況判断と絶妙な用兵バランスを要求されます。
第1ターン、敵に接敵ができないドイツ軍は、敵砲兵の射程外を行軍移動で展開します。第9軍団はモンス近郊へ、第3軍団は運河沿いに西へ。唯一の例外は、第18師団の砲兵で、優先的に登場させて、モンス外郭陣地の敵歩兵を砲撃。1ヒットを与えます。


イギリス軍は敵の動きに合わせて、運河沿いの防衛線を引くとともに、モンスに兵力を集結。7射程(!)を持つ長距離砲と市内に陣取った砲兵の共同砲撃で、敵の前衛に1ヒットを与えます。

第2ターン、ドイツ軍は、モンス外郭と運河北方の足止め部隊に対し攻撃を加え、これをともに撃破します。が、モンス市内のスタックへの8火力砲撃は、損害なし。

ほぼ計画通りに防衛線を引いたイギリス軍は、後方に陣取った砲兵で広域にわたる砲撃を実施しますが、(期待値は2.6にも関わらず)わずかに1ヒットのみ。

第3-4ターン、両軍は運河を挟んだ砲撃戦に。それぞれ、最も効率的な砲撃を計算し、撃ち合います。激しい砲弾の応酬で、各ターンに2-3ステップずつの損害が出ますが、致命的な消耗には至らず。

第5ターンには、増援で登場した第4軍団も加わり、コンデ周辺で砲撃戦を仕掛けますが、こちらはほぼ効果なし。
唯一、ドイツ軍が積極的に白兵戦を仕掛けたのがモンス近郊で、前半から巧みな浸透移動で戦線を押し広げます。薄く広がった敵に対し、準備砲撃の後、河川越しながら白兵戦を実施。6ターンまでに、#42XX列までイギリス軍を押し込めます。が、ドイツ軍自体も、反対砲撃と防御射撃により、第9軍団のほとんどの歩兵連隊がステップロスしており、そのまま、夜の帳を迎えます。

事態が動いたのは、夜明け前の第8ターンでした。前ターンまで友軍が展開していた最西部の地区を、フランス軍が放棄してしまいます(選択ルール)。結果、無人の野となった西部を第4軍団の一部が浸透し、#1610の騎兵スタックを攻撃。防御射撃を物ともせず、白兵戦に持ち込んだ第8師団の2個連隊がこれを撃滅し、ついに渡河に成功します。

敵の後方浸透の危機に、イギリス軍は西から随時、斜傾陣のごとく、撤退を開始します。

第9ターン、運河を渡河した第4軍団は、歩兵と砲兵を先頭に押し立てて、追撃を開始します。砲撃の後、果敢に白兵戦を仕掛け、騎兵2個大隊と歩兵2個大隊を撃破してしまいます。

敵に接近されたイギリス軍は、予定通り、砲兵による阻止砲撃の後に、南部への後退を行います。が、drに恵まれず、戦果はなし。

第10ターン、時間がなくなってきたドイツ軍は、部隊を遮二無二、前進させると、的確な砲撃を実施します。これがのべで4ヒットの大当たりに。さらに白兵戦に持ち込み、2ユニットを撃破します。
中途半端な後退は傷を広げるだけと判断したイギリス軍は、敵の行軍移動を阻止するため、一部の足止め部隊を展開。移動-移動の手番を選び、敵に接敵されないギリギリの後方へ部隊を退却させます。

第11-12ターン、足止め部隊により、効果的な前進が阻止されたドイツ軍は、これを除去。さらに、砲兵を先頭に立てる積極的な行軍で、一部の敵を砲撃で除去しますが、両軍の主力はほぼそのままで、バヴェ-レス・クエノイの最終防衛線に辿り着きます。


第13ターン、接敵ができないドイツ軍は、それでも砲撃により、3ヒットを与え、最終ターンの攻撃に備えます。

一方のイギリス軍も激しい反撃砲撃で、敵の前衛と突出した砲兵に4ヒットを与え、士気を上げます。

この時点で、イギリス軍の撤退成功はほぼ確実になり、また、バヴェの防衛も手堅い状況です。しかしながら、イギリス軍の損害は34ユニットで、後6ユニットを撃破できれば、ドイツ軍が2VPを手に入れます。まさに、最終決戦に・・・。
運命の第14ターン、ドイツ軍は最後の攻勢に出ます。第9軍団で唯一、完全戦力を維持する歩兵連隊を、最大限の砲兵支援(8火力)のもとで、バヴェに突進させます。また、レス・クエノイには、長駆、北端から南端まで駆け抜けた第4軍団主力が、同じく最大限の砲兵支援(8火力)のもとで、攻撃をかけます。同時に戦線中央部にも、消耗しきった第3軍団が最後の気力を振り絞り、攻撃を実施します。

まず、砲撃により、4ユニットを撃破されたイギリス軍。あと2ユニットで敗北に。が、白兵戦の防御射撃で敵に大きな損害を与えられれば、まだ、可能性はある、はずだったんですが・・・。
ここで、ドイツ軍は「Kinder!」を宣言(選択ルール)。急に現れた学童に驚いたイギリス軍は、つい、射撃を控えてしまいます(-1drm)。結果、ほとんどのドイツ軍が無傷で白兵戦に突入し、2ユニットを撃破。さらに戦闘後前進で退路を遮断した上で、歩兵大隊を撃破し、敵の42ユニット相当を壊滅することに成功します。この時点で、ドイツ軍の勝利が確定しました。


いやー、面白かった。簡単至極なルールながら、展開の流動性が高く、幾戦かの演習が必要ですが、しっかりしたデベロップが成されていて、バランスは極めて良好です。結果的に大量損害でイギリス軍が敗北となりましたが、うち、4ユニットは包囲下での損害であり、これを見越して足止めをしていたら、可能性はありました。バヴェの防衛と撤退とも成功しており、どうなっていたか?

これまで抽象的すぎて評価できなかったロン・ベルですが、このアイテムはしっかりとした佳作です。ちはら会では、いつでも挑戦を受けますよ~。