今月のソロプレイは、今年110周年を迎える日露戦争関連から「奉天決戦1905」(GJ)です。NHKドラマ「坂の上の雲」の放送にリンクして発売された、「最新」の日露戦争アイテムで、エリア式のカードドリブンで奉天会戦を描きます。
基本は、カード1枚を消費して、日本軍はいずれか1個軍を、ロシア軍は任意の1エリアの部隊を活性化して、エリアの占領(または阻止)を目指すものです。この時、任意のユニット数の1グループのみが、戦闘またはグループ移動ができます。グループからもれた(グループ化しなかった)ユニットも移動はできますが、無条件で敵の先制反撃を受けるなど、ハンディがあります。
いわゆるアルンヘムシステムの傍流なんですが、最大の違いは、ユニットが行動しても裏面(行動済み)にならない点です。よって、カードさえあれば、何度でも活性化できることに。行動済みにするには、戦闘で損害を与えるしかありません。
戦闘は任意で、攻撃側だけがヒットを与えることができます。これを防ぐためには、防御側の先制反撃があります(カードまたは渡河などの特定の条件で実施可能)。いずれもユニットごとにdrして、戦闘値以下が出ると1ヒットになります。1ヒットの損害は、裏面になる・後退する・除去するの組み合わせで、充当できます。
特殊なカード攻撃である重砲射撃(及び28cm砲射撃)も強力ですが、裏面にすることはできても砲撃だけではユニットを除去することはできません。よって、攻撃戦術としては、まず、砲撃で敵を弱体化(裏面)にし、その後、地上部隊による攻撃で、敵を排除してエリアを獲得していくことになります。
カードには、上記のリソースとしての使い方とイベントとしての使用があります。ダブルアクションのできる「強行軍」、二つの軍を同時行動できる「共同攻撃」、消耗した部隊を回復させる「補給」など、両軍共通カードをランダムに引き、作戦を練ります。これ以外に「満州軍総司令部」や「28cm砲」「秋山支隊」、「クロパトキンの決断」や「総退却」など、日露それぞれの使い捨ての固定カードが4枚ずつあり、この投入時期も思案がいります。
このゲームでは、ロシア軍支配下のエリアを奪うたびに、指揮が一つずつ落ち、不利な戦闘修整が付きます。さらに、+3となると、サドンデスで日本軍の勝利に。ロシア軍はこれを防ぐため、なけなしのカードを使って士気の回復を図らざるを得ず、そうすると部隊展開が遅れ、占領エリアを失う、といった悪循環に陥る危険があります。
これを考えると、展開は、史実通り、乃木第3軍によるロシア軍右翼の迂回行動から始まります。クロパトキンがなぜか平地から山岳に部隊を移動させたため、右翼が非常に弱体となっています。そこを第3軍が突進し、占領地拡大と士気の低下を進めます。ロシア軍はサドンデスにならないよう、細心の注意を計りながら、なんとか、奉天近郊で対峙するハメに。あとは、奉天とその後方エリア(VP地点)に、日本軍が突入できるかで、勝負が決まります。
まず、ゲームに先立つ第0ターン、日本軍のみに移動が許されています。ここでの前進が第1ターン以降の流れを決めます。今回、選んだのは、荒山子以外の前線への浸透と第3軍の敵右翼への突進、西麻戸への第1軍の突入です。前線への浸透は、主として敵兵力を拘束し、自由な展開を制限します。その上で、第3軍の敵右翼への突進で、敵の士気回復を上回る迅速な前進を狙います。同時に、西麻戸への第1軍の突入により、サドンデスの可能性を高め、敵のアクションを士気回復に浪費させる目論見です。

第1ターン、上記の方針に従って、日本軍が攻勢を開始します。主攻の第3軍が冷子堡のレンネンカンプ支隊を吹き飛ばし、強行軍で大民屯に突入。さらなる強行軍で、興隆甸まで前進します。同時に、第1軍が反対方面の西麻戸を強襲し、ロシア軍の士気を下落させます。

ロシア軍は、士気回復に追い立てられ、まともな防戦準備が遅れます。本来は、曹家台と興隆甸に5個部隊ずつを送りたいところですが、アクション数が限られてしまったために、奉天の総予備を半数ずつ派遣するのがやっと。それでも第3軍が興隆甸を占領するまでに、最低限の士気回復と全盛堡・曹家台ラインの強化に成功します。

第2ターン、日本軍は正面突破とばかりに、奉天西の曹家台へ強襲を行いますが、敵の先制反撃を喰らって、攻撃は頓挫します。

ならば、反対翼での揺さぶりとして、第1軍が邊牛堡子で重砲支援の元に攻撃を敢行しますが、こちらはロシア軍の補給によって、損害を回復され、やはり戦果無し。終了間際に、第3軍が全盛堡に突入するのが、やっとです。


第3ターン、日本軍は直接アプローチで、今度は全盛堡で攻勢に出ます。まず、重砲支援で敵の5ユニットを混乱状態にします。が、日本軍も敵からの阻止砲撃を受けて、過半数のユニットが混乱状態に!突撃前に早くも攻勢は頓挫します。

と、ここでロシア軍が「ミシチェンコ騎兵団」を投入!曹家台で待機していた騎兵1個連隊が、敵陣をするりと抜けて、小新民屯に突入します。突如、サドンデスの危機にさらされた日本軍は、中央から予備隊を引き抜くと、強行軍で小新民屯に送り込んで、何とか足を止めます。が、これで貴重な時間(カード)を浪費してしまいます。


最終の第4ターン、日本軍は未だ、1点もVPを獲得せず。全ての資源を利用して、最後の攻勢をかけます。まず、全盛堡に重砲と28cm砲を投入し、強行軍でついに敵を粉砕します。そのまま、勢いを維持して、ついに奉天後方の九里溝子への突入に成功します。
ロシア軍は、反撃のために部隊をかき集めると、九里溝子に進入させて、大反攻の機会を待ちます。
と、部隊転換で弱体化した敵の左翼で、第1軍が電撃的に攻勢に出ます。この攻撃が奇襲となり、戦闘drもよく、第1軍が怒濤の突進を見せ、ついに奉天エリアへの突入を果たします。
日本軍は一気に3VPを獲得し、勝利条件を満たします。このままでは、負ける!ロシア軍は、九里溝子で乾坤一擲の反撃をかけます。「クロパトキンの決断」で士気値を上げたロシア軍が、寡兵の第3軍に襲いかかりますが・・・ここで日本軍は「秋山好古の奮闘」で対抗!結果、ロシア軍の攻勢は、日本軍の先制反撃で粉砕され、奪還できず。この瞬間、日本軍の(薄氷の)勝利が確定しました。

一風変わったアルンヘムシステムですが、基本戦略がほぼ決まっていることで、プレイの負担感は少ないです。ターン数も4ターンということもあり、慣れれば小1時間で決着が付きます。いわゆる箱庭「奉天会戦」ですが、その分、戦術的な運用に傾注できます。最近、ブームの「関ヶ原強襲」(GJ)に似ているかも・・・。
いずれにしろ、手軽でそれなりにヒストリカルな奉天会戦を楽しめるアイテムとして、ご希望があれば、インストプレイできますよ~。