「では、いよいよ決着をつけますか。なんの決着か言わずとも十分ご承知とおもいますが(笑)」

二日連続例会のお知らせを載せた直後に、作戦級の鬼ことDas Reichさんから書き込みがありまして。そう、「バルジ大作戦」(CMJ)の「挑戦状」です。

たびたび、記事にしてきたとおり、「バルジ大作戦」は、数年来の最もホットな対戦になっています。今回の対戦にあたり、よくよく確認したところ、なんと5年以上、二人で戦い続けていることが判明。30年も前に発売されて、やり尽くされたと思われたゲームを、未だに新戦術で戦い続けるとは!軽薄短小の流れに逆らい、古くさい昭和の香りをこれでもかとまき散らす、まさに漢のライフワーク!(うそ)

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冗談はさておき、要諦は、鹿内ギャンビットに対抗する連合軍の防御戦略の変遷で、辿り着いた先が、二つの異なる防御策-mitsuの「北の防人作戦」とDas Reichさんの「中央突破阻止配置」です。さらにお互いに練度を上げ続けているため、ここ数年は展開が拮抗して、1例会の8時間程度では決着が付かないプレイばかり。ならば、今回、二日間をフルに使って、行き着くところまで行こうということになりました。

陣営は、柔軟戦略のドイツ軍をmitsuが、中央突破阻止配置の連合軍をDas Reichさんが担当します。

連合軍の配置は、その名の通り、ドイツ軍による中央突破を防ぐものです。結果として、鹿内ギャンビットの要諦である、装甲7個師団の集中を阻止することになります。この作戦も当初は、第106と第28歩兵師団の戦区に兵力を集中し、最も重要な最初の2ターンに、物理的に突破を阻止するというものでした。

その後、対戦の度に改良を重ね、現在はイメージのように、中央の突破を防ぎながら、北部についても「ベストセットアップ」並みの強力な防御(第2歩兵師団の3個スタック!)になっています。この配置で行けば、北部の堅さはいうまでもなく、今まではほぼ確実に犠牲になっていた、と第106歩兵師団の1個連隊に生き延びるチャンスが生まれます。

唯一の弱点は、クレルヴォ方面にわずか1個連隊しか配置できないことです。ドイツ軍がこちらに装甲を集中すれば、ほぼ確実に突破と、バストーニュ及び中央部へのルートが開けることになります。

第1ターン、連合軍の北部から中央の集中防御策に対し、ドイツ軍が取った手は「南部からの機動攻撃」でした。最も薄いクレルヴォ方面に第5装甲軍の2個装甲師団を投入し、一撃突破を狙います。残りの1個装甲師団はサンビット方面に展開し、一次と二次で敵の消耗を狙います。

逆に守りが厚い北部は、第1SS装甲師団の高比率の強襲と擲弾兵2個師団による2:1攻撃に止めます。また、南部は一番戦闘比が高い第4歩兵師団中央部への3:1攻撃を実施します。

drの結果、北部と中央部の2:1攻撃がA2とContで失敗したものの、残りはEx系とDeとなり、4個連隊を壊滅させ、2個連隊を1ステップロスで敗走させます。

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想定通り、南部からの突破に成功し、第二次移動で2個装甲師団が中央部とバストーニュ方面に突進します。

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これに対し、連合軍は足止め部隊で時間を稼ぐ一方、北部では3枚スタックを2つ積み上げ、断固として正面突破を阻止する構えです。サンビットには生き残った歩兵1個連隊と第14騎兵グループが籠城し、バストーニュの機動予備の2個CCは、中途半端な投入を止め、市内にスタックしたまま。

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第2ターン、北への圧力を続けたいドイツ軍は、無理を承知で1:1攻撃を実施しますが、予想通りContで膠着。

続いて、主攻勢となる中央部では、足止め部隊を蹴散らしながら、増援の装甲2個旅団もつぎ込んで、第二次攻撃でサンビットを強襲します。結果は、またもEx系のD2A1で損害は出たものの、敵の守備兵力を半減させます。

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同時に、戦線の拡張と敵兵力の拡散を狙うドイツ軍は、クレルヴォを抜いた1個装甲師団強をバストーニュから中央部に拡散機動させます。単独で道路を封鎖していた1個歩兵連隊を、第二次攻撃で5:1で包囲殲滅します(ただし、結果はEx2)。

ここで、中央部の最前線が整っていないとみた連合軍は、バストーニュの機動予備と南北の2個機甲師団をつぎ込んで猛反撃に出ます。戦線の未整理とEx系での消耗を幸いとして、ドイツ軍の2個装甲連隊を包囲し、3:1と6:1攻撃で撃破してしまいます。

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第3ターン、ドイツ軍は急ぎ、サンビットを強襲し、これを陥落させると、引き抜いた装甲2個師団を北上させ、中央で包囲下にあった第2装甲師団の救助に向かいます。

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このまま、消耗上等の乱戦か、はたまた、戦線を構築した上での限定攻撃か・・・中央部の敵の8個CCに対し、ドイツ軍は9個機械化連隊とほぼ互角。西方からはサンビットを墜とした3個装甲師団が前進をしており、次ターンには合流可能な状態でしたが・・・悩みに悩んだ末に、ドイツ軍が選択したのは慎重な「大人の対応」-後者でした。これが最も無理がない手でしたが、反面、突破のチャンスを失ったのかもしれない、と心のどこかで葛藤していました。

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しかし、人の世の常で、自分のことほど、わからぬもの。結果論から言うと、これが「正しい選択」になりました。

ドイツ軍の手堅い展開を見た連合軍も同時に兵を引き、北部と南部にそれぞれ、防御線を構築します。北部の防御はさらに厚くなって、シャーネアイフェル高地からマルメディ近郊を通って、ウェルボモンまで、全く隙のない戦線が構築されます。南部もドイツ軍に接敵されたバストーニュに機甲2個連隊を入れ、ヌシャートーから中央部にかけて増援の空挺師団で防衛線を形成します。

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戦術的練度の極めて高いDas Reichさんだけあって、効率的で合理的な戦線です。そう、たった、1カ所を除いて・・・。

第4ターン、ドイツ軍が見いだしたのは、ラ・ロシュからヌシャトーに抜けるフリーの道路網でした。ここを突いて、南部を崩壊させるしかない!

北への圧力を続けるため、第6SS装甲軍を残すと、第5装甲軍、第7軍、装甲増援の全力を持って、南部への突進を開始します。第7軍と装甲増援がヌシャトーに正面攻撃を行う一方、スコルツィーニ特殊部隊を先頭に、第5装甲軍が巧妙極まる機動をかけます。第1次移動でコマンドが先行し、そこを通って、装甲1個師団が後方へ雪崩れ込みます。

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この急激な変化に、歩兵のみで編成された南部の連合軍は、なんとか戦線を後退させますが、背後からの脅威に十分に対応することができず。唯一、対抗可能な機甲CCは、包囲下のバストーニュに・・・。

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第5ターン、決死の連合軍は、ドイツ軍の6:1と4:1の第一次攻撃を、drに助けられて凌ぎましたが、第二次攻撃でついに防衛線が崩壊。さらに、中央部へ転進した1個装甲師団により、マルシェが陥落します。

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連合軍には待望の大量増援(イギリス軍)が登場しましたが、移動制限によりミューズ川を越えられず。

第6ターン、ヌシャトー攻防戦が開始されます。市内にスタックした2個連隊に対し、機械化3個連隊と歩兵が4:1攻撃をかけ、ステップロスをさせます。さらに第二次攻撃で、南部の要衝ヌシャトーを陥落させます。これにより、ドイツ軍の南端からの突破が確定し、連合軍の南部増援の登場が絶望的になりました。

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瀬戸際の連合軍は、制限の解除されたイギリス軍とアメリカ軍の北部増援をもって、中央での反撃を開始します。延べ10個機甲連隊(旅団)による攻撃は強力で、リエージュとマルシェの間に楔を打ち込みます。

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第7ターン、この後、バストーニュが陥落すれば、勝利水準の60VPの目途が立つドイツ軍は、防御態勢に切り替えます。急ぎ、南部の部隊を北上させ、中央部に強力な戦線を構築します。

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イニシアチブを取り返した連合軍は、そうはさせじと、中央部にて歩戦共同で強烈な打撃を繰り出します。が、ドイツ軍の戦線も装甲を含む2枚スタックで、高比率が立たず。ほとんどが2:1前後というガチンコの戦闘は、全てExという血みどろな消耗戦に。

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いよいよ、VP判定が始まる第8ターン、ドイツ軍は一気に勝負を付けるべく、包囲下で消耗したバストーニュに、装甲増援による強襲をかけます。連合軍は、これを阻止すべく、3枚もの交通妨害を使用しますが、ドイツ軍はこの妨害の中を突進し、2ステップロスを被りながらも、攻撃に移ります。さらに、連合軍は戦闘支援まで繰り出し、オッズはContもありえる4:1に。息詰まるdrの結果は・・・D1。

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これにより、後1ステップになったバストーニュは、第二次攻撃により陥落します。

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これで、VPは64点。さらにだめ押しをすべく、ドイツ軍は消耗した装甲擲弾兵連隊をディナンに突入させ、10点を加えます。連合軍の反撃で間違いなく全滅するでしょうが、これにより反撃戦力を誘引する目論見です。

サドンデス条件を満たされた連合軍は、長考に沈みます。ディナンを除き、もはや、重要都市を奪還することは不可能。となれば、敵部隊の撃破で後3点を奪うしかない。何度も何度も比率計算を繰り返し出した答えは、4カ所での計算し尽くされた反撃でした。4:1攻撃はともかく、残りは1:1と1:2。そう、2カ所でEx1を出す以外にないところまで、追い込まれていました(確率は1/81!)。この時点で、秘かにドイツ軍は勝利を確信したのですが・・・。

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最善を尽くすものに、神は微笑む。なんと、全ての攻撃が成功!ウォーゲームの神は、苦悩のDas Reichさんを見捨てませんでした。これにより、ドイツ軍VPが59点(!)となったため、ゲームは第9ターンに突入することに。

両軍とも数点ずつで勝利条件を満たせるという、極めてタイトな状況。攻撃に出るか、防御で待ち受けるか?両軍が選んだのは、お互いに最も弱い部分を攻撃する、殴り合いでした。ドイツ軍が未だ打撃力を持つ装甲部隊で強襲すれば、連合軍は空軍力を生かして防御と反撃に。戦線はほとんど動かない中、損害だけが増えていきます。

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結果、第9ターンが終わった時点では、装甲部隊の損害設定(1ユニットで-2VP)が響き、VPは2点減少して、57点と全くのイーブンに(ともに勝利条件まで3点ずつ!)。

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が、しかし、気まぐれなゲームの神は、ふたたび、ドイツ軍に微笑みます。執拗な反撃の結果、1ユニットあたりの戦力が低めの連合軍は、より消耗が大きくなります。そして乱戦により、戦線中央部に消耗した歩兵連隊が取り残されたことが、運命を分けました。

第10ターン、このウィークポイントに、ドイツ軍は歩兵と1個装甲師団相当を投入し、6:1で突破口を開きます。その結果、第二次移動により、機甲3個を含む5個連隊相当が包囲攻撃を受けることが確定。もはや、VPを維持するための戦線の保持は不可能に。

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「これ以上は・・・無理ですね」

バルジ決戦、ついに決着す。のべ10時間を越える激戦は、こうして幕を下ろしました。

イメージは、昇天した部隊。連合軍は12個師団相当(!)、ドイツ軍も5個師団強が壊滅するという、恐るべき殲滅戦でした。

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両者とも、持てる全ての作戦能力と戦術能力を投入した戦い。疲労感とともに、それを上回る大きな充足感に満たされた、2日間でした。