この日、最後の対戦は「ヒトラー暗殺計画」(T誌付録)です。このアイテムは、70年代のシミュレーション業界で一世を風靡したSPI社の政治権力闘争シリーズの一作です。
マップには抽象化されたベルリン市街地が描かれ、その中で親衛隊(SS)と軍諜報部(Abwehr)が政治闘争を繰り広げます。
各ユニットは1つずつ、移動力を消費して敵に接敵し、接触と呼ばれるオーバーランを仕掛けます。成功すると敵を一時的な行動不能や中立状態にしたり、後退させたりすることができます。この時、友好的な司令部にいるユニットは、防御力が+4となります(OKWにいる国防軍や通信省にいるナチス要人、ゲシュタポ本部のSSなど)。政治ZOCにより、後退ができないユニットは除去され、退役になります。退役ユニットは毎ターン、1/3の確率で現役復帰できます。
接触が終わると、両陣営とも非動員の味方を動員して、シンパを増やすことができます。
さらにSS側は複数のユニットで敵を取り囲み、ゲシュタポによる捜査を行うことができます。これに成功すると、軍諜報部からチットを奪ったり、捕らえて尋問(拷問)を行うことができます。尋問まで行くと、drによっては暗殺されたり、退役に追い込まれたりします。
これに、敵ユニットをベルリン外に追放できる「連絡」や連合軍の進撃、各種のランダムチット等の要素が加わります。ランダムチットには、連絡を自陣営に有利にできる「友軍及び敵軍連絡」、鉄道や航空機による優先移動の「トラベル」、動員された敵を寝返らせる「裏切り」、尋問を軽減する「アリバイ」、クーデターのdr修整となる「総統への接近」などがあり、ゲームに彩りを与えます。
今回、初プレイだったため、ルールを確認しながらのお試しプレイとします。BIBIさんが親衛隊(SS)を、mitsuが軍諜報部(Abwehr)を担当します。
序盤、両陣営は味方のリクルートに精を出します。相対的に影響値の大きい親衛隊は、動員工作でのアドバンスもあって、次々とボルマンやゲーリングなど、ナチス要人を動員していきます。
対する軍諜報部は、国防軍司令部に敵が侵入することを防ぐため、非被疑面のユニットでスクリーンを張り、残った要員で国防軍や民間人をリクルートします。が、drに恵まれず、史実ではヒトラー暗殺計画の中心人物シュタウフェンベルクや反ナチの将軍トレスコウが、賛成をしながらも態度を保留する事態に(半動員状態)。

このままいくと、クーデター時に人員が不足する事態が懸念されましたが、ランダムチットとイベントが軍諜報部に傾きます。結果、SS長官ハインリッヒ・ヒムラーはやたらと外遊を繰り返し、かつ、チットがほとんど獲得できないため、軍諜報部はなんとかイーブンに近い状態までいきます。
極めつけは、戦争情勢が深刻になってきた第5ターンに、なぜかヒムラーがリスボン(!)へ交渉に行ってしまいます。すでにチャンネル海峡とパリには連合軍が進出しており、そのままではベルリンに戻れない状態になります。焦るヒムラーは連合軍の出先機関と交渉(接触)して、どうにか、南フランスまで辿り着きます。

が、この時、SS長官のいないベルリンでは、カナリスはじめ、諜報部の面々がSSの人物に接触を繰り返し、政治力を持ってナチ及びSSの5人を退役させます。

クーデターを仕掛けるには、大きく政治バランスが傾いた今しかない!第6ターン、ヒトラーがベルリンに戻ったことを確認した反ナチス側は、ワルキューレ作戦を発動します。「総統への接近」チット3枚を投入した作戦は成功し、クーデターが開始されます。

まず、第0ターンの軍諜報部中間フェイズには、カナリス及び2名の諜報部員が活性化します。開始までに、総統本営を間接包囲していた軍諜報部は、総統官邸にカナリス指揮下の攻撃隊を突入させ、見事、ヒトラーの暗殺に成功します。

これにより、逡巡していたシュタウフェンベルクやトレスコウも行動を開始し、次々にSS側に襲いかかります。結果、第0ターンが終わった時点で、スコルツィーニやカルテンブルナー、ミュラーなどが死亡します。

その後、生き残ったSSと軍諜報部の間で、血まみれの市街戦が展開され、第2ターン終了時にはSS側がシェレンベルクを残すのみとなります。

第3ターン、ナチス親衛隊にトドメを指したのは、やはりカナリス提督でした。この瞬間、ナチスによる支配は終結し、クーデター政権が連合軍と和平を結び、ドイツ崩壊を免れることができました。

今なら、きっと、エリア式のカードドリブンにでもなっているでしょうが、当時の「真面目な」シミュレーション技法は、どこかノスタルジックを感じさせます。動員や接触など、馴染みないシステムやランダム性の高いチットなど、慣れるまで時間はかかりますが、それらしい展開になります。やっと、クーデターの作法(?)がわかってきたところなので、もう一戦くらい、やってみたいものです。